世界★★少年倶楽部☆☆Ver.7.0

アメブロ http://ameblo.jp/wongkong76667/ では書けない事、面白い!美味い!!カッコいい!!!などと思ったモノをじっくり描いていきますヨ。

【長編小説】@LINEグループ☆UG ~episode8~

 

 

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 @LINEグループ☆UG

~episode8~


東京事変 - 能動的三分間

episode8:

信号とフレッシュネスバーガーと⑧


東京事変 - 幕ノ内サディスティック

 

 

ロバートは目を細めて窓の外を眺めてる。
だけど、そのスキマから覗く瞳の奥はとても濃厚で鋭い光を放っていた、太陽光が虫眼鏡で小さな小さな一点に凝縮され、紙に火をおこすほどの力を持つように。

『写真の時間』の中では、この男はいつも火をふくような視線を放って撮影に臨む。
決してスマートじゃないけど、情熱が堰を切ってほとばしり散ってくるような視線。

その視線の鋭さが並々じゃないのは、この男が見てきた芸術の色濃さを目が記憶しているからなのかも。

ロ:Masa、今日もサイコーに美しい芸術を撮るぞ!ライティングは任せたからな、おれはカメラに集中したい。
ロ:パークビューのサイコーな景色をバックに撮るからな。テキーラサンライズのような、ピンクがかったオレンジ色の夕焼けとともにだ。

・ああ・・イエス、分かってるよ。

ロ:特に今日の新人女優はあの往年の大女優、ブルック・シールズ似の、神が手抜き無しのマジモードで作り上げた芸術のような女だ。じきに手が届かなくなるだろう。
ロ:彼女のオーラに圧倒されて手が震えてしまわないように、俺も気合い入れないとな。

アンティーク調で大切に手入れのされた木枠の窓からは、はるか彼方までセントラルパークが広がっている。
セントラルパークってこんなに広かったっけ??
人工的に造られた不自然な自然、その周りに広がる碁盤の目のような区画。
地についてない薄っぺらい美しさ。
今日、ロバートはどんな風にこの空間と時間をカメラで切り取って、しびれるほど美しい芸術を生むのか。

日本では南向きの部屋が人気だけど、ここニューヨークでは公園向きの部屋に人気がある。
直で太陽の当たらない北向きだろうと、公園向きのステータスは容赦なく家賃に反映される。
日当たりより公園が見えるかどうか、セントラルパークが見える部屋のフィーは段違いに高い。

ロ:女優を撮るのは夕方少し前から、濃い影と光がせめぎあう時間帯だ。
ロ:光と影はせめぎあい、時には反発しあい、そして溶け合う、男と女のようなモンだ。
ロ:光だけでは芸術にならない、影だけでも芸術にならないんだ・・分かるか?

おれの答えを待たずにロバートは話を続ける。

ロ:女優は今頃ゆっくりとシエスタ(午後の長い休憩)を楽しんでいるコトだろう、オレたちもシエスタを楽しむとしようか。

 


ドローン空撮 ニューヨーク セントラルパーク DJI Phantom 2 - Central Park 20141230

 

ブルック・シールズ―私のライフスタイル (新潮文庫)

ブルック・シールズ―私のライフスタイル (新潮文庫)

 

 

 

 


'80-95 ブルック・シールズCM集

 

なぜかこの男といる時は、冷えた白ワインで少し酔ったような、若干の眠気に似たような心地よさがある。
ここに来てから少しビールを飲んだかもしれないけど、なぜか覚えてない。

隣の休憩部屋に来ると、自然と唾液が出てくる程の美味そうな匂いがムンムンと立ちこめていた。

これは・・・。
野太い丸太を半分に割った豪快な木のテーブルの上には、山ほどのボナファイドチキンとテンダーチキン、ケイジャンフィッシュ、ポップコーンシュリンプ、
バタフライシュリンプ、ケイジャンポテトフライ、マッシュポテト、ジャンバラヤ、マカロニチーズ、コールスロー、ビスケット、
そして色んな国のビールとレモネード・・・。

丸太の存在感を打ち消す程の、おびただしいほどの食いモン、飲みモンがテーブルを埋め尽くしていた。

ロ:Masa、辛いの好きだろ?チキンはスパイシーとマイルド半々だ!
ロ:俺のファンからの奢りだ、好きなだけ飲んで食ってくれ!その後撮影までは贅沢なシエスタだ。
ロ:大統領のように働き、王様のように遊び、ライオンのように喰らい、赤ん坊のように眠るってなw
ロ:まあ俺の場合、写真に関しちゃ働いてる意識はこれっぽっちもないけどなw

そう言いながらも、すでにロバートは勢いよく開けたブートビアをあおっている。
おれも何回か飲んだ事がある、ベルギーで人気の飲みやすいビール。

おれが無難にハイネケンを飲んでいると、ステレオコンポから古内東子の曲が流れてきた。
おれが女になりかけた時によく聞いてた曲。
おれが女になりかけた一因は、この独特の声を持つ女性シンガーの曲にもあるのかも。
女もいいモンだな、なんてあの時は思ってしまったからなぁ。

ロバートといると、なぜなのか、たいていおれの趣味に合わない曲が流れるけど、ごくたまーにおれのツボに入る曲が流れる。
この前はグリーン・デイやマン・ウィズ・ア・ミッションの曲が流れていて、1曲もいいと思わなかったw

だけどそんな音楽の趣味とかはどうでもよくって、おれがこの男といるのは、ツボどころかハートと肉体が痺れるような話を聞けるからなんだ。

 


古内東子  サヨナラアイシテタヒト Toko Furuuchi (PV)

 

THE SINGLES SONY MUSIC YEARS 1993~2002【Blu-spec CD(TM)】

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and then... ~20th anniversary BEST~ (2枚組ALBUM)

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【TV】 古内東子 「誰より好きなのに」 1996

 


ロ:Hey!、Masa、そんなキツツキみたいにチマチマ食ってないで、もっとかぶりついて味わえ!そんなんじゃ運もセンスも逃げていくぞw

ロバートは自分の手よりもゴツくて大きなフライドチキンを頬張り、ときおり親指と人差し指をチュパチュパ舐め、繰り返しまたチキンを頬張る。
アメリカのフライドチキンはでかい、日本のチキンの1.5倍はある。
そしてポパイズのチキンは衣がサクサクしていて肉も美味い、ケンタとはぜんぜん違う。

・おれはこれくらいの口運びでじっくり味わって食べるのが好きなんだよ、だいたい口いっぱいに頬張ったら唾液が追い付かないから、美味いモンも美味くなくなるよw

ロ:そうか、ところでMasa、もう食べ物は撮らないのか??インスタグラムにのせるんだろう??

・あー、やめたよ、なんとなく、なーんとなく全体のバランスでみても、単体でみてもカッコよくないなと思ってね。食べ物の写真て。

ロ:なぜカッコ悪いと思うんだ??

・いやよく分からないけど、なんとなくねー。

ロ:・・・なんとなくじゃあないな、そう・・、お前はサボってるだけだ。
お前はこれまで自分の考えを突き詰める事をしてこなかった、これからはそうはいかないぞ~!
なぜカッコ悪いと思うんだ??

 

 


Green Day: "Holiday" - [Official Video]

 

ロバートは右手に持っていたチキンをいったん皿に戻し、おれの顔を飄々と覗き込んだ。軽く笑みまで浮かべながら。

立場や力や理論で押さえつけてくるタイプではない。
そんな事をしても後で虚しさしか残らないのを、この男は知っている。

・なんか生々しくてさ、嫌な感じというかねー

ロ:食いモンを喰らう時、どこを使う?どこだ??、どこを使う???
・口?
ロ:他には?
・ほか?手?
ロ:他には?
・舌かな?
ロ:他には??どこを使う??
・ほか・・あ・・歯、なんとなく分かった、・・歯だ歯! 食べ物は歯なんだよ
ロバートの話であったじゃん、キレイに撮るには歯を見せるなっていうの・・

ロバートは嬉しさを押さえながらものっそりと身を乗り出してきた。
ロ:Light! その通りだ!Masa! 食いモンは、美女に例えるところの歯だ、キレイに撮るためには歯を見せてはいけない。
ロ:見た目、形はどんなにキレイにしてあってもそれは『牙』、動物の血生臭い生存競争の証、人間で言うと生々しい生きざまの象徴だ、俺たちは牙で他のいのちを噛み砕き、
喰らって生きている、確かあのトーキョーグールでも言っていただろう??

ロバートはケイジャンポテトを軽くつまんで、今度はテカテで流し込んだ後呟いた。
ロ:・・・生活と芸術は決して混じりあわない・・・。

 

 


MAN WITH A MISSION「Emotions」

 

・あー、なるほどな!、なるほどしっくり来たー、この前インスタグラムから食べ物の写真を消したらヤケにスッキリした感じになったんだよねw
ページ全体が上品になったっていうかさ。

ロ:Hey!Masa! お前さんのインスタグラムを見たが・・お前のモノクロ写真はセンスがある。おれにはない空間の切り取りセンスがな・・光と影のバランスの掴み方はまだまだだけどなw
ロ:光だけでも、そして影だけでも何も生まれない、2つがせめぎあって、時には反発しあって、そして溶け合う、男と女のようにな。絡み合いから芸術が生まれるんだ。
ロ:食いモンは誰が撮ってもアングルもたいして変わらない、あんなつまらないモノを載せるのは時間の無駄だ、女、子供にやらせておけ。それに絵面が美しくない。

ロバートは2本目のテカテを開けると話を続けた。
ロ:ジャパニーズ、タロー・オカモトは『芸術は美しくあってはいけない』と言った、だが俺の考えは少し違う。
ロ:美しくない芸術もアリだが、カネを生まないからおれはそんな芸術はやらない、人は心地よいものキレイなものには喜んでカネを払うが、
 逆をやるのはセンスを良く思われたいゴミか、評論家気取りのクズか、アタマがどこかおかしなヤツか・・ただの変態だ。
ロ:カネを生まない芸術は俺にとってはクソだ、ゴッホの様に4んでから評価されてもどうしようもないだろう??
ロ:甘い汁は4んだら吸えないんだからな?、Masa??

ロ:美しいものを生み出して、カネをGETする方が良いだろう??、Masa??
ロ:いや、しかしタロー・オカモトの本はなかなか良かった、彼の本は芸術といっても良い、作品によってムラがあるけどな。

 


タモリ対談_2

 

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間"を捨てられるか (青春文庫)

 

 

 

自分の中に孤独を抱け (青春文庫)

自分の中に孤独を抱け (青春文庫)

 

 


「芸術は爆発だ!」「何だ、これは!」  岡本太郎は何者? 1/2


ロ:ところで日本人はこのポパイズチキンのエキサイティングな味を知らないんだろう??
このおしゃべりなカメラマンが気まぐれなクエスチョンをなげかけてきたところで、背景がにぶく光った気がした。

・みんなケンタッキーのチキンを食ってるよ、
と答えたトコロで背景が細かいモザイク状に割れ始めて、裂け目から光が漏れている。

NARUTO」で、イタチからかけられた幻術『月読(つくよみ)』をサスケが破った時のような。

 

 

 

なんと奇妙なコトに、目の前のカメラマンの顔も首も細かいモザイク状に割れ始めて、そのモザイクそれぞれが上下左右、時計回り、反時計回りと、
つかみどころがない動きをくりかえしている。
バグったテトリスのような、なんだか・・。

割れ目から刺す光は痛いほどに眩しくなってきて、細かいモザイクは光に溶けるようにまじりながら消えかかっている。

しばらくして、あの男の声だけを残してモザイク全てが消えて、目の前の世界はすべて真っ白な光になってしまった。

??:「それは不幸な話だな」・・・「それは不幸な話だな」・・・「それは不幸な話だな」・・・・・
男の言葉が何回かこだました後静かに消えて、白く何もない世界だけが残った。

 

自分の運命に楯を突け (青春文庫)

自分の運命に楯を突け (青春文庫)

 

 

 

今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)

今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)

 

 
その風景はただただ、白く輝いている・・『光だけでは芸術にならない』・・

そして反転するように、急に視界が真っ暗闇になったと思ったら、まるで全身が打楽器になったように、おれの体のあちこちから音が出ていた。
全身の皮膚の裏側からドラムを叩くような音がする。

それもつかの間、そのからだじゅうの音が重力に引き寄せられて流れる水のように、おれの鼻先の一点に集まったトコロで、目の前がさらに深い闇になった。

と思ったらなんか人の声がする。
ドンドンドンドン!!

:お客様、大丈夫ですかー??お客様ー??ドア開けますよーー??お客様ーー??

おれはゆっくり目を開けた。
けたたましい音に、声にならない悲鳴を上げた後、おれは夢を見ていたことだけは理解した。

・・体はまだ動かない・・

 

 

やや乱暴にドアを叩く音が鳴り響いていた。

今までのは夢・・というよりおれの願望・・
・・目が覚めたんだ・・。

夢の寿命はせいぜい5分ほどしかない、10分もすれば夢の内容なんてたいてい忘れてしまう、そして夢を見ている最中はそれが夢だなんて夢にも思わない。
だから夢は儚い

なんでだろう、なぜかは分からないけど、神サマはそういう風にヒトを作り上げたらしい。

もう1人のおれはまだ近くにいて、隠れているような気がした。

おれともう1人のおれ、そしてその2人をさらに後方で見守る3人目のおれの輪郭がうっすら出来上がっていて、この瞬間、とても脆くなっている自分に焦った。
サナギから蝶が孵化するように、ふとしたキッカケでおれが自然とその3人目になってしまいそうな気がした。
おれが3人目になってしまったら、他の2人が意思を持ち始めておれは管理されてしまうだろう。

おれは2人から振り回されて、流されそうな気がして、何とか気を紛らわして押しとどめた。

流されると言うことは余計なカロリーと余計な時間を消費させられてしまう、と言うこと。
流されちゃダメだ。

5人の人格をもつ28歳の女の子がニコ生で放送してたことがあったけど、こういう感じで5人になっていったのかもな。

その子の主人格はもちろん女で、他にも5歳の女の子、JK、小学生の男の子、体育会系の男子大学生、というぐあいに、女2人、男2人の別人格をもっていた。
リスナーのリクエストで、人格をその場で変えてみせることもあった。というより別の人格を呼んでくる、と言った方が良いか。

男の人格を持った流れでバイセクシャルになったらしく、おれがスカイプ凸した時には『今は女と出会いたい』とあっさりフラれてしまった。
その女は椎名林檎に似ていて見た目もビジュアル系だったからか、実際女リスナーにもモテた。
V系では中性的なヤツがモテる、そしてバイセクシャルに寛容な世界で、実際に性的にそういう嗜好の男女が多い。

その女生主は中性的な女でもあり、中性的な男でもあった。
どうりでモテるはずだ、おれがねじ込んでいく余地など少しもなかった。

その子の事で面白い?と思ったのが、自分の年齢以下の人格しかいない事だった。
やはり自分が経験してきた年齢のデータしか脳内にないのかもしれない。

 


椎名林檎 浴室 2008 さいたまスーパーアリーナ

 

 


夢の記憶はチョコレートが溶けるように、やがて消えてなくなっていく。

よく分からない男に、おれが食べ物を撮らなくなった理由を指摘されたのは覚えてるけど、他の事はもう全く思い出せない。
なるほどおれが食べ物の写真に嫌気がさしたのはそういう事か、夢の事なのに、てか夢に出てくるくらいだから妙に納得した。

気が付くと頭はスッキリしていた。
台風一過のイヤミなくらい澄んだ青天のように、ヘンに冴えているけど、頭の奥の奥が軽く火照っている。

2人目のおれも、ヤバい3人目のおれも、もうどこにもいない。

またヘンにならないうちに帰ったらゆっくり寝る。
寝てからバーガー食おう。

そしてひときわ大きな声がドアの向こうで響いた。
:お客様ー??、今からドアを開けまーーす!!

おれは自分がトイレにいるのを数秒かかってようやく把握して、ハッと我にかえった。

パンツはずり下がったまま、イチモツをブラブラさせたまま、両方の手のひらでみっともなくドアをバンバンたたき返した。
・あっ、あの、今出まーす、今出ますからー、待ってくださーーい。

ドアの外で、分かりましたー、と今度は落ち着いた店員の声がした。

フーッっと身体が勝手に安堵のため息をついた後、おれは無造作にイチモツをトランクスにしまう。
手足がだるくて頭の右耳の上付近がピリピリするほかは、たった今、おれの頭は特に異常はないみたいだ。

:よかったああー、お客様心配しましたよおーーー!
:大丈夫そうですね、さいあ・・いや、もしもの時は救急車呼ばなきゃと思ってたんですよーー

ドアを開けたとたん、くしゃくしゃの笑顔を向ける女がいた。
岡本太郎が沖縄で撮った写真の中に、こんな貌のおばあちゃんがいた、エグい表情のモノクロ写真だった。
しわというのはそれまでのその人間の人生が刻まれるものらしい、笑顔ですごしてきた人間には見るものを和ませる皺が、
荒んだ毎日を過ごしてきた人間には人を凍り付かせる皺が刻まれる。

女はよほどおれを心配したのか、ホッとしたというような、どこか田舎臭い笑顔には疲れがにじんでいた。
その疲れには嘘がなかった。

 

沖縄文化論―忘れられた日本 (中公文庫)

沖縄文化論―忘れられた日本 (中公文庫)

 

 

 

美の呪力 (新潮文庫)

美の呪力 (新潮文庫)

 

 
一瞬、誰だ?この女は??、と思ったけど、よく見るとフレッシュネスバーガーの制服?を着ていて、もっとよく見るとあの鼻持ちならない『T-X』女だった。

なんだ、中身は、てか仕事を離れると案外人間くさい女なのかもしれないな、などと考えていたら、
「ご注文の品、もう出来上がってますよ」と言われ、もうその顔は『T-X』に戻っていた。

その顔は仕事を全うする毅然とした表情に見えて、おれは安心した。
さっきはいけ好かないと思っていたものが、もう違っていた。

うん、人を色眼鏡で見てはいけないな、コイツはこういう奴だ、と勝手に決めつけない方がいい。
そうやって考え方を少しづつ改良していけば、人付き合いも本当はそんなに難しいコトではないような気もする。

1階に降りると、木村多江似の若いママと子供はもういなかった。
単独のオバサンやお婆ちゃん、オバサンの団体、ポツンとお爺ちゃん1人、お客はおばさんばかりになってた。

兄貴が言ってたけど、お客がオバサンばかりの店はたいてい美味いんだとか、ホントかね。
兄貴の持論だと、女は不味いと思った店には2度と行かない、特にオバサンは手厳しいから、美味い店にしか行かないらしい。

ホントかねソレ、と思ってたけどな、まあ分からなくもないか。
あの二郎系の店ではオバサンなんか1人も見た事ないしなw

レジのそばの席では、まるで子供の時からの夢だったハンバーガーを食べるように、お爺ちゃんが嬉しそうにバーガーにかぶりついていた。
ようつべの動画で見た、エンペラー吉田という入れ歯爺ちゃんに似ていたので、入れ歯があるのかないのか心配になった。

入口近くのレジで会計を済ませた後、バーガーの詰まった紙袋を受け取る。
レジ後ろの時計はもう12時を刻もうとしていた。

11時くらいには家に帰るつもりだったんだけど。
しかし、なんだか濃い午前だった。

店を出ようとすると「ありがとうーございましたー」と澄んだ女店員の声が響いた。

ふと振り返ると、いけ好かない奴だと思ってた『T-X』女の、いちばん人間臭い笑顔がそこにあった。

 

 


Terminator 3 - Película 2003 - Mejores Escenas 8/16 [Latino HD]

 
バーガーで膨れ上がった紙袋とマンションのパンフレットをチャリの前カゴに突っ込み、歩いて駅前の線路を横切る。
ここも以前は開かずの踏切でどうしようもなかった。
今は1日に数本電車が走るだけ、走ってるのを見る方が珍しくなった。

駅と線路が立体になってから、電車ははるか頭上を走るようになって、開かずの踏み切りの前の、むせるような喧騒が嘘のように消えた。

不動産屋の兄貴が言うには、街を人体だとすると人は血液らしい。
踏み切りで人の流れがさえぎられると、街の勢いが弱まる。
反対に、線路や踏み切りがない高架の街は、人の流れが活発で街全体が元気なところが多いとか。

この街は線路前の喧騒とともに下町っぽい親しみやすさが消えて、かわりにカッコつけたプチセレブ気取りがこぞって押し寄せてきた。

そして駅から1つ目の角には昔ながらの煙草屋があって、右に入るとちょっとした喫煙所がある。
この界隈では外に灰皿があるのはそこだけだから、常に人がたむろしていて一服してる。

喫煙所の数軒先には「寿家玉三郎」というパチンコ屋があって、そこのお客もタバコを買いに来るので煙草屋はけっこう繁盛してる。
薔薇やらオレンジやチョコや色んな味の煙草が置いてある。

パチンコ屋のお客もたまに喫煙所にたむろってるけど、店でも吸えるのに、外で吸った方がうまいんだろうか。

有機野菜やらスムージーやらミドリムシやら、いかにも健康に気を使っていそうな人種で溢れるようになったブレーメン通り。
その商店街の人通りから数メートルの、嫌でも目に付く場所で、バツが悪そうに煙草をふかす愛煙家たちはムカデやヤモリのような、
煙草を吸わないおれから見たら日陰に生息する気味の悪い生き物のようだった。

ここにも光と影がある。
なんとなく、さっきの夢も光と影みたいな内容だった気がする、うん、なんとなく。

ゆっくり商店街を歩きながら、おれはいつもより頻繁に考え事にふける自分に違和感を感じてる。
決定的に違和感を感じたのは毎朝、毎晩欠かさず食べてるチョコのメーカーを間違えた事だ。
もうその味に、からだが虜になってしまっているくらい大好きなのに、ありえない。

ありえない、神戸ショコラはグリコだ、不二家ってどっから出てきたんだ。
不二家といえばカントリーマームだ、ありえない。

せっかく甘→→い世界の住人になったのに。
ありえない・・・。

 

 

 

 

小ぎれいに生まれ変わったマルエツを過ぎると、商店街の人通りが減ってくる。

そしてパチンコ屋のサスケまで進んで来ると地面のタイル張りの舗装は終わり、どこにでもある普通のアスファルト舗装になる。
タイル張りがなくなって商店街の終わりを認識するのか、そこから先にはよそ者は滅多に入ってこない。
デート中のおちゃらけたバカップルも同様、そこで駅の方に引き返していく。
ここにも光と影。

そして駅の反対側のサスケはネットカフェやボーリング場もあるのと対照的で、ここのサスケは地味だ、打ってるのは地元の爺ちゃん婆ちゃんがほとんど。

こんな街の情景の中にも、ずぶとく光と影が張り付いている。

道のタイルの終わりぐらいのところで、インド人がインドカレー屋のチラシを配っていた。
店員は松平健を濃くして横に太らせたような微妙なイケメンだった。
昔のおれの立ち位置と同じ感じ。

:オイシーインドカレー、ランッチヤッテマスゥーー、ヨロシッキオネガイシマスゥーー

店員の後ろのインドカレー屋を見ると、相変わらずガラガラだった。
1人も客がいない、てかお客が入ってるのを見た事ない。

真っ白なコック?姿のインド人がペラッペラの嘘くさい笑顔でチラシを渡してきた。
その安そうなコックコート?はところどころに擦ったような茶色い汚れがあった。

:ヨロシッキッオネガイシマッスゥー
開店ガラガラの店にお客を呼び込むにはひどく陳腐な日本語だった。
おれが何か話したら通じるのだろうか?・・コイツに・・。

・おれはさ、洋食屋のカレーが好きなんだよ、神保町にある南海のチーズトッピングのカツカレーとかさ
・あそこのはチーズを入れないとダメなんだけど

・あとバーグのスタミナカレーとか、あんなのがいいんだよ
・日本人はカレー好きって言うけど、おふくろの味のカレーか、洋食屋のカレーが好きなだけで、本場のインドの味は別に求めてないんだよね、ぶっちゃけ
・日本人みんなそうだよ、アンタらよく考えた方がいいよ??

体がひとりでに反応するように、思考するより先に喋っていた、気が付いたらインド人に言い放った後だった。
知らない誰かが勝手におれの体を動かしたように一気に喋っていた。

意外にもインド人は「そんなの分かってんだよ、ボケ!」というような冷めた目つきになった後、あの『T-X』のように瞬時に笑顔になった。
感情とは関係なく、無理やり目じりを垂らし、無理やり口角を上げて、無理やり笑い顔を作っている。

その瞬間、このインドの奴らには別の目的があるのが分かった。
なんだか分からないけど、料理屋は擬態だ、擬態を盾にアブない事でもやってるのかも?

無理やり口角を上げて目尻を垂らしたインド人の目は、胡散臭い黒目がちの表情になっていて、怒りを含んだその黒目の奥は暗い情熱で鈍く黒光りしていた。

:スイマセーン、マタ、ヨロシキオネガイシマーース
インド人はそう言った後、また瞬時に穏やかな表情になると同時に、居直るようにおれに背を向け、他の客にビラ配りをし始めた。

おれに腹を立てたのか、インド人の背中越しに聞こえるその呼び込み声は何気に尖っていた。

 

 

 

 

 瞬時に表情が変わる人間というのは怖い。
その間ヒトとしての感情を明らかに殺している、そんな人間にはホンネなんか明かせない。

そして、同じ日の午前中にそんな人間と2回も遭遇してしまった、今日はなんて日だ。

ヘンな声も聞こえてくるし、昼メシの前に少し寝よう、確かに連日にわたって夜更かしをし過ぎた。

そうだ、あのスピーカーから聞こえてきた声。
あの声がした後から、頭のどこかが妙に冴えてるけど、おさえが効かない感じがある。

違和感の正体はアレなのかどうか。
あの時スピーカーから聞こえた声は日常のねじれから漏れてきたような異質な叫びだったけど、おれにとって害じゃあないというのは感じた。

異様な出来事だったけど、無害だからこそ、トイレで起きてから今まで思い出さなかったのかも。
かといって、今度あの声が何かしでかしてきたら、はたしておれにとって有益なんだろうか、そこんとこは考えてもしょうがないか。

しかしおれってこんなに考え事をするヤツだったっけ。

脳は全体の10%しか使われてない、なんて言われてるけど、残りの90%のどこかを誰かがしれっと動かしてるような感じだな。
おれじゃない誰か。

その誰かも違和感がなくて、例えるなら細胞の1つ1つレベルでおれと融合してるような。

まあいいや、とにかく帰って休もう。

 

 

 

 

人通りがほとんどなくなったセブンイレブンの前でチャリにまたがった。

1つ目の信号はちょっと前に赤になった。
前からは2人のサラリーマンが赤信号を無視して、煙草の煙をみっともなく吐き出しながら、おれの横を足早に通り過ぎて行った。

上司と部下みたいで、
上司は190cmくらいの長身でオールバック風の7:3分け
いかにも稼いでそうな感じでアイコスをフカしていた。

部下の方は髪の毛をところどころツンツン立たしていて、咥え煙草でガキっぽかった。

どういうガキっぽさかというと、気が緩んだ高卒のガキ臭さ。

大卒の奴は大学時代にさんざん遊んだりバカをやってるからこそ、社会人としての切り替えができてる。
どんなFラン大卒のヤツでもね。
話したら分かるよ、仕事への意識や姿勢で分かる。
ウチの兄貴みたいな底辺バカ大学卒でも、いちおう社会人としての心構えはあった。

高卒の奴はそういう遊びの時間が足りてないと思うんだ。
切り替えができてないんだな。
だから社会人になっても飲みの席で乱れてしまったり、仕事中でもふとだらけてしまったりする、前の会社でもそういう奴らが多かった。

信号は青になり、おれは自転車を軽く漕ぐ。
うーん今日の午前中は頭を使い過ぎた、近年稀にみる密度の濃さだww

マジでちょっと寝てからメシ食おう。

 

 

家に着いてパンフレット一式とバーガーの詰まった紙袋を親父に渡すなり、おれは自分の部屋に上がって、
何かから解放されたようにベッドにダイブした。

営業の話を聞いたら疲れたから、ちょっと寝てから昼飯を食べるというと、親父は「駄賃だ」と言って、
お釣りと500円分のクオカードをおれにくれた。もう1枚は自分で使うらしい。

クォカードのアイドルは元AKBだかSKEだか、会社のイメージキャラなんだと、ミタライさんが言ってた。
白い包みの中身のカードはまだ見てない。

目を閉じて熟睡しようとすると、やっぱり頭のどこかが妙に冴えてて、ランダムに午前中の出来事が浮かんでは消え、浮かんでは消え。
打ち消そうと思っても、映像が次々と浮かんでくる。
そう言えば大学の講義で、禅について話があったな、こういうのは流れに身をまかせ、あるがままでいた方が良いらしい、浮かぶに任せ、消えるに任せ。

かぶに任せ、消えるに任せ・・・。

 

これさえあれば。

これさえあれば。

 

 

 

 

さっきの信号無視をしたリーマンの映像も浮かんだ。

そんな中、妙に冴えた頭に、ふとある事が浮かんだ。

兄貴が信号無視をするなと言った訳が分かったんだ。

人生はシーソーゲームなんだ。

人間は慣れるし、流される生き物。
悪い事にも慣れるし、良い事にも慣れる。

良いことも悪いことも習慣になる。

信号無視をする人間はルールを破る人間、信号無視は小さな違反かもしれないけど、そんな人間は流されるともっと大きな・・
生活のルールも破るようになる。
そして人間関係のルール、夫婦の約束事、さらに仕事のルールまでも破る可能性を持つ人間。人間はつい流される。

反対にルールを守る人間はことさらに仕事のルールは守る。
そしてどんな些細な事でも、ルールを守る事の重要さを知ってる。
そんな人間は信用されて金も人もついてくる。

悪い習慣と良い習慣。
そして静かに習慣はエスカレートしていく。

悪い方へ進む人間と、どんどん良い方向へ向かう人間。
それこそ、えげつないほど残酷な光と影があらわれる。

そのベクトルは真逆で混じりあう事はない、差はどんどん広がるばかり。

信号無視をしたさっきの上司と部下は出世しない。
人生はシーソーゲームなんだ。

兄貴が言ってたな、田園調布で1年間営業の仕事をしたけど、1回も信号無視をする人を見なかったって。
やっぱりそうだ、ルールを守る人たちが、結果あのエリアに住めるようになった、当然の事だな。

ルールを破る人間はどんどん貧乏に、ルールを守る人間はどんどん金持ちに。
やっぱり人生はシーソーゲームなんだな・・・。

考えがまとまったらつかえが取れたように、急に眠気が襲ってきた。
午前中だけで、おれのアタマは膨大なエネルギーを消費したハズだしな。

兄貴に「焼肉おk」のメールするの忘れたけど・・起きてからでいいや・・

あと口内炎にアレ塗らなきゃ・・・ああ・・それも後でいいか・・

そして気が遠くなるほどのけだるさに堕ちて・・、おれは泥のように眠った。

 

 


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≪~次回新章につづく ~またどこかの週末に・・≫
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